ドイツ南部ののどかな村、シュタインガーデン。そのオーストリア国境近くのアルプス山麓にあるヴィース地区に、巡礼教会が立っています。
このヴィースの巡礼教会はロマンティック街道沿いの草原にぽつんと佇む白亜の教会。奇跡の教会と呼ばれる秘められた伝説をもつスポットとして知られています。この教会の正式名称は「鞭打たれるキリストの巡礼聖堂」です。
1983年、ヴィースの巡礼教会は、人類の創造性を結集した傑作として、その文化的価値の高さを認められ、世界文化遺産として登録されました。
奇跡の伝説
「鞭打たれるキリスト像」と呼ばれる像が主祭壇に飾られています。このキリスト像には涙を流したという伝説が残されています。
見捨てられたキリスト像
1730年に聖金曜日の聖体行列のために、修道士たちによって作られた寄木造のキリスト像。関節部分は麻布で覆われ赤い彩色が施されています。鎖に縛られ血と傷をもつ像の哀れな姿に動揺した信者たちは、聖金曜日が終わると修道院の屋根裏深くにしまい込んでしまいました。
奇跡の瞬間
1738年に信心深い農婦マリア・ロリーが洗礼の立会人としてここを訪れた時に、このキリスト像を哀れに思い自ら譲り受け、数ヶ月間熱心に祈りを捧げました。1738年の6月14日の夕刻に祈りを捧げたところ、突然キリストの像が涙を流しました。この話が「涙の奇跡」という伝説となり、諸国から巡礼者たちがマリアの家を訪れるようになりました。
有名になったキリスト像
1740年には牧草地の小さな礼拝堂が建てられ、マリアの家からそこに移されたのです。その後も巡礼者が増え、一般からの浄財を募るなどして1745~1754年に新しい教会が建設されました。
その時の大修道院長のガスナーはこの教会の設計を、ドイツ・ロココ(後期バロック)の完成者として名高いドミニクス・ツィンマーマンに依頼しました。この教会に全精力をかけて造り、完成してもこの教会の近くに自宅を建てて生涯ここで過ごしました。現在も巡礼に訪れる人が後を絶たないドイツ・アルペン街道の人気観光スポットの一つとなっています。
アルプスの山に映える、ヴィースの巡礼教会の外観
外観は白色の壁にエンジの屋根が印象的な巡礼教会の外観で、バイエルン地方の聖堂によく見られる玉ねぎ型をした屋根の塔が特徴です。よく見ると乳白色にピンクを加えた女性的な色彩となっています。素朴な佇まいですが、周りの牧草地やアルプスを背にした姿は美しく感じられます。
現在の建物は1985~1991年にかけて修復されたものですが、18世紀の建築当時そのままの姿が忠実に再現されています。
まるで別世界!壮麗なヴィースの巡礼教会内部
簡素な外観に対して内部には華美で繊細な装飾が施されています。楕円形の身廊を囲む周廊からの光が織りなす複雑な色とロココ様式の荘厳な美しさを持つ内陣は必見です。幻想的な宗教空間は、ヨーロッパ随一のロココ内装といわれるほど高い評価を受けています。
大天井画
主祭壇の天井フレスコ画はドミニクス・ツィンマーマンの宮廷画家だった兄ヨハン・バプティスト・ツィンマーマンのキリストの復活や最後の晩餐などが描かれています。復活したキリストが虹の玉座に座る姿は必見です。内部に入ると奥の祭壇に引き込まれるような錯覚が感じられます。これは見事な装飾とマッチしたフレスコ画の影響も大きいともいわれています。
身廊の8組の双柱
柱の下部はとても質素に造られています。上になるにつれ豪華になっていく変化が面白く、柱頭の上にはキリストが説いたといわれる8つの幸福が描かれています。主頭の形と彩色いずれもしなやかで優美さも特徴的です。
イルカに乗った少年像
説教壇下には天使の像があります。イルカに乗って海に出かけた少年とイルカの友情が題材で、今にも飛び出してきそうな躍動感は魅力的です。
主祭壇と鞭打たれるキリスト像
中央に伝説のキリスト像を安置した、内陣奥にある荘厳な主祭壇。ここは弟ドミニクスの作品で、十字架にかけられたキリストの血を表す赤い柱と、神の恩寵を表す青い柱に囲まれています。
「鞭打たれるキリスト像」の上にはプルブレヒトによる「人となり給うたキリスト」があり、主祭壇の最上部には仔羊の彫像があり、自ら犠牲になり復活したキリストの象徴である子羊の像も見る価値ありです。
パイプオルガン
館内では白と金のスタッコ装飾のツタに戯れる天使たちを見ることができます。この曲がりくねった精緻なスタッコ装飾のツタはパイプオルガンにも及んでいます。このパイプオルガンは1757年に製造されたものです。天井画とパイプオルガンの装飾の美しさは欧州随一といわれています。
ロマンティック街道の終点
ロマンティックな古都街道というイメージのロマンティック街道はローマに続く道ということから「ローマへの巡礼の道」との意味を持ち、カトリック教徒たちが巡礼のために年月をかけて整備した道でもあります。
この街道の終点にあるヨーロッパの教会にしては比較的新しい教会には、年間100万人もの巡礼者が訪れています。大自然と調和の取れた姿や内部の美しさには誰もが心惹かれます。
教会のすぐ目の前には教会の設計者ドミニクス・ツィンマーマンの家が残っています。1階はレストランになっている建物です。また、教会の裏にはのどかな牧草地(ヴィース教会のヴィースとは牧草地という意味)が広がる風景も素敵です。
30年前、どの様なルートで訪れたのか、イタリアからかスイスからかも覚えていないのですが、勧められてお尻が痛くなる程揺られて眺めて、予約した食事の時間の為また引き返した記憶がありますがその前後は記憶にないのですがヴィース教会のマリア像は忘れられません
秋篠寺とヴィース教会は私の世界遺産です