トラムンタナ山脈の文化的景観
トラムンタナ山脈の文化的景観は西地中海に浮かぶスペインのバレアレス諸島自治州の中心地であるマジョルカ島の北部にそびえる、標高1,000メートルを超えるトラムンタナ山脈の麓に広がる農園の景観や、農業文化から構成される世界遺産です。
トラムンタナ山脈は海に突き出た険しい山岳地帯で、元来農地に適さない荒れた土地。しかし1000年以上に渡る島の人々の努力によって8世紀ごろから急角度の斜面には石を積み上げて石垣と棚田が築かれ、棚田同士を連結した農水路を張り巡らして水車場から得た貴重な水を全ての農地に行き渡らせる農業システムを作り出し、山岳を豊かな農地へと変えていくことで、山岳と農業、自然と文化が一体化した見事な景観を作り出したのです。
マジョルカ島はもともとキリスト教徒の土地でしたが、一時イスラム教徒に奪われて12世紀になってレコンキスタによって再びキリスト教徒の手に戻った土地。イスラムの支配を受けていた時代の資料は乏しいのですが、近年トラムンタナ山脈のダム湖の底からはイスラム教徒の遺跡を思わせる品々が多く発見されており、イスラム時代の人々の文化や暮らしを解明する上でも貴重な手掛かりとなっています。