| 名称 | ヨーロッパの大温泉保養都市群 |
|---|---|
| 国 |
イギリス イタリア オーストリア チェコ ドイツ フランス ベルギー |
| 登録区分 | 世界文化遺産 |
| 登録年 |
2021年に開催延期された第44回世界遺産委員会拡大会合において、「ヨーロッパの大温泉保養都市群」が世界文化遺産として登録されました。
ヨーロッパの7か国にまたがるこの世界遺産には11の温泉地が含まれています。以下の温泉都市は天然の鉱泉水を中心に発展しました。
ヨーロッパの大温泉保養都市群
オーストリア
- バーデン・バイ・ウィーン
ベルギー
- スパ
チェコ
- フランティシコヴィ・ラーズネ
- カルロヴィ・ヴァリ
- マリアーンスケ・ラーズネ
フランス
- ヴィシー
ドイツ
- バート・エムス
- バーデン・バーデン
- バート・キッシンゲン
イタリア
- モンテカティーニ・テルメ
イギリス
1700年代初頭から1930年代にかけてヨーロッパで花開いた国際的な温泉文化の歴史を今に伝えています。
温泉源泉を中心に発展したこれらの都市には、単に湯に浸かるだけでなく、鉱泉水を飲む飲泉場や回廊(コロネード)、治療用施設、さらに滞在客が交流や娯楽を楽しむためのカジノ、劇場、ホテル、公園などが一体となって整備されました。
医療・科学・健康法(温泉療法)の発達と、都市計画や観光文化が融合した独自の都市様式が作られた点が高く評価されています。
これらの温泉都市は、18世紀から19世紀にかけてヨーロッパの王侯貴族や文豪、音楽家たちが療養と交流のために集まる社交の場でした。
例えば、チェコのカルロヴィ・ヴァリやマリアーンスケ・ラーズネには、詩人ゲーテや作曲家ベートーヴェン、ショパンらが滞在し、思索を深めたり作品のインスピレーションを得たりしました。ドイツのバーデン・バーデンは「ヨーロッパの夏の首都」とも称され、ドストエフスキーがカジノで情熱を燃やし、その体験をもとに小説『賭博者』を書き上げた場所としても広く知られています。また、ベルギーの「スパ」は、現在世界中で使われている「スパ(温泉施設)」という言葉そのものの語源となった都市であり、14世紀から鉱泉の効能が知られていた歴史を持ちます。
また、映画や文化の舞台としての側面も魅力的です。カルロヴィ・ヴァリは毎年開催される国際映画祭の舞台であるほか、映画『007 カジノ・ロワイヤル』のロケ地としても使用されました。美しく洗練されたコロネードやクラシカルなホテル群は、映画『グランド・ブダペスト・ホテル』の世界観に影響を与えたとも言われています。
こうしたヨーロッパの温泉都市は、温泉を単なる入浴手段としてだけでなく、自然と調和した広大な公園での散策や文化的な鑑賞活動を組み合わせた「総合的な健康増進アプローチ」として捉えていました。この思想は、古代ローマ時代から続くヨーロッパの浴場文化の伝統を受け継ぎつつ、近代的なリゾートへと進化させたものです。
同じイギリス国内にある世界遺産「バース市街」のように、古代ローマ時代の浴場跡(ローマン・バス)と18世紀のジョージアン様式の美しい街並みが共存する都市は、この大温泉都市群の構成資産の一つであると同時に、単独でも世界遺産に登録されています。また、古代ローマの壮大な公衆浴場文化の源流は、イタリアの「ローマ歴史地区」に残るカラカラ浴場跡などにも見ることができ、ヨーロッパにおいて「水と健康」がいかに長きにわたり都市形成と人々の生活の中心にあったかを感じることができます。




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