トルコの最大都市イスタンブル。この街を歩けば、まるで時間旅行をしているかのような気分になる。ビザンツ帝国、オスマン帝国、そして現代トルコ——それぞれの時代の痕跡が、街のあちこちに残されている。
「まずはアヤソフィアから行こうか?」
ガイドのメフメトが微笑む。かつてキリスト教の大聖堂として建てられ、後にモスクへと改修されたアヤソフィアは、まさにイスタンブルの歴史そのものだ。巨大なドームの下に立つと、目の前に広がる黄金のモザイクとイスラムのカリグラフィーが、異なる文明の融合を静かに語りかけてくる。
「次はブルーモスクね!」
友人のサエが興奮気味に言う。正式名称はスルタンアフメト・モスク。青いタイルが美しいこのモスクは、内部に入ると柔らかな光に包まれる。壮麗なシャンデリアが吊るされ、礼拝に訪れる人々の静かな祈りが響く。
「歴史の層を感じるなら、トプカプ宮殿は外せないよ」
メフメトが案内するのは、かつてのオスマン帝国の宮殿。豪華なタイル装飾、広大な庭園、そしてスルタンの財宝の数々。中庭からはボスポラス海峡が見え、その向こうにアジア大陸が広がっている。
「最後にバシリカ・シスタンに行こうよ」
サエが提案する。地下宮殿とも呼ばれるこの貯水池は、ひんやりとした空気が漂い、暗闇の中に柱が並ぶ幻想的な空間だ。メデューサの頭が刻まれた柱がひっそりと眠る。
夜、エミノニュの港でチャイを飲みながら、今日巡った世界遺産について語り合う。
「イスタンブルって、不思議な街ね」 「そうさ、ここは東洋と西洋が交わる場所だから」
メフメトの言葉を噛みしめながら、ボスポラス海峡を渡る風を感じた。