| 名称 | シェキの歴史地区とハーンの宮殿 |
|---|---|
| 国 |
アゼルバイジャン |
| 登録区分 | 世界文化遺産 |
| 登録年 |
シェキの歴史地区とハーンの宮殿
アゼルバイジャン北西部、大コーカサス山脈の山麓に広がるシェキには、18世紀以降に築かれた歴史的な街並みが残されています。世界遺産「シェキの歴史地区とハーンの宮殿」は、1772年の大規模な泥流によって以前の町が破壊された後、より高い場所に再建された歴史地区と、そこに残るハーンの宮殿、要塞、隊商宿、商人の邸宅などから構成されています。大コーカサスの森林に覆われた山々を背景に、高い切妻屋根、深いベランダ、庭を備えた伝統的な住宅が並ぶ景観が大きな特徴です。2019年に世界遺産に登録されました。
シェキは古くから東西を結ぶ交易路に位置し、シルクロードの交易都市として発展しました。特に18世紀末から19世紀にかけては、蚕を育てて繭や生糸を生産・交易する産業が街の繁栄を支えました。そのため、現在の街並みには、ハーンの宮殿だけでなく裕福な商人の邸宅や隊商宿など、シルク交易によって生まれた富を示す建築が残されています。サファヴィー朝、オスマン帝国、カージャール朝、さらに19世紀のロシア統治など、周辺地域を支配したさまざまな勢力の文化が建築に影響を与えていることも特徴です。
主な構成要素と見どころ
- シェキ・ハーンの宮殿
18世紀後半に領主(ハーン)の夏の離宮として建てられた名建築。職人の手作業によって釘や接着剤を一切使わずに作られた格子状の窓「シェベケ」には、数万ピースものカラフルなステンドグラスが嵌め込まれており、光が差し込むと室内が幻想的な色彩に包まれます。 - キャラバンサライ(隊商宿)
シルクロードを行き交う商人やラクダの群れが休息した大きな宿居施設。頑丈な石造りの広大な建物で、現在も宿泊施設や観光スポットとして使われています。 - 伝統的な商人屋根と住居群
絹貿易で財を成した豪商たちの邸宅群。壁には繊細な壁画や伝統的な暖炉が設けられ、通気性の良い高い三角屋根が特徴的です。 - 巧みな水利・水道網
山々からの雪解け水や川の水を都市内にくまなく行き渡らせるための水路システム。精巧な配水網によって生活用水だけでなく、風車や絹織物の生産、家庭菜園の散水まで幅広く利用されていました。
シェキ・ハーン宮殿の窓を飾る「シェベケ」
シェキのシンボルである「シェキ・ハン宮殿」の窓を飾る「シェベケ」は、世界でも他に類を見ない木工細工とガラス工芸の技術の結晶です。1平方メートルあたり最大で数千個もの緻密な木片とベネチアから運ばれた職人こだわりの色ガラスが組み合わされており、釘や接着剤なしで精密に噛み合わさっています。宮殿の前に立つ樹齢数百年とされる巨大なプラタナス(スズカケノキ)の大木とともに、かつてのシルクロードの富と栄華を色濃く物語っています。
また、シェキは今なお職人の街としての気風を残しており、伝統的な手作りシルク製品や伝統菓子「ハルヴァ」の産地としても非常に有名です。
このシルクロードのオアシス都市は、同じく交易路の重要拠点として世界遺産に登録されているウズベキスタンのイチャン・カラやブハラ歴史地区とも深い歴史的・文化的なつながりを持っています。かつて砂漠や山脈を越えて旅した隊商(キャラバン)たちは、これらの都市を巡りながら絹や香料、文化を交流させていました。シェキを訪れると、中央アジアからコーカサス山脈を経てヨーロッパへと伸びていた東西交易の壮大なストーリーを肌で実感することができます。





