ボーパールの東北に位置する小さな村サーンチーにある、インド最古の仏教遺跡です。アショーカ王の仏塔(ストゥーパ)がほぼ完全な形で残されていることで有名です。
インドの仏教遺跡において重要なものとして、大ストゥーパや周囲の仏教建築物が1989年、ユネスコ世界遺産として登録されました。
王たちの仏陀への信仰を語る仏教建造物群
1818年、デカン高原の小高い丘で発見されたサーンチーの仏教建造物群。ストゥーパや僧院などの遺構から成り、その数は約50もあるといわれています。インド最初の統一国家を築きマウリヤ王朝(前324~前187年頃)に最高の栄光をもたらした、第3代目の王アショーカ王(在位前273~前232年頃)により、中央にある第一ストゥーパが建立されました。これは、ストゥーパの原形ともいえるものでした。
カリンガの戦いの後、自分の行いを悔いたアショーカ王は、国内の平和的統治を願い仏教に帰依して仏法を国家統治の基本としました。王は自ら仏陀の聖跡を巡礼し多くの仏塔を寄進しています。また、仏陀の階級を越えた平等を基本とする教えを普及させることに成功しました。王の努力はもちろんですが、古代階級制度社会の頂点にいる者の中で複雑難解なバラモン教に不満を抱いていた人々の力もあり、領内全域に広めることができたようです。
その後クシャナ王朝の(30~172年頃)のカニシカ王(在位144~172年頃)は、中央アジアに仏教を広げる道を開き、世界的宗教への発展に尽力しました。サーンチーの丘はこの頃より仏教の聖地として繁栄しています。
一時期繁栄した仏教は13世紀初頭にイスラム教勢力の侵入によってインドでは壊滅状態となり、この仏教遺跡群も14世紀以降は廃墟となり忘れ去られてしまいました。
1818年に発見されましたが、アマチュア発掘者や盗掘者によって雑に扱われたため荒れ果ててしまいました。1912~1919年にかけてイギリスの考古学者、ジョン・マーシャル卿の発掘や調査によってやっとその全貌が明らかになり、現在へと至っています。
調査結果によるとこの遺跡はマウリヤ王朝期からシュンガ王朝期の第一期とダプタ王朝期以降11世紀までが第2期に分かれています。途中衰退期はあったものの、滅亡までは全時代に渡って仏教の中心だったと伝えられています。
アショーカ王によって建てられた、大ストゥーパ第1塔、そのすぐ脇にあるストゥーパ第3塔、丘の縁に建つ第2塔、アショーカ王の石柱などが見どころとなっています。
大ストゥーパ第1塔
ストゥーパ第3塔
サーンチーの仏教建造物群のまとめ
2000年以上経つストゥーパからは平和で穏やかな気に満ちているといわれています。ここに来ると、インド仏教の成り立ちと発展を目の当たりにできる、とても興味深い遺跡群です。
ぜひ、訪れてみてください。