ポルトはポルトガル北部の港湾都市で、首都リスボンに次ぐ第2の都市です。ポルトの旧市街は、「ポルト歴史地区、ルイス1世橋およびセラ・ド・ピラール修道院」として世界遺産に登録されています。
登録当初は「ポルト歴史地区」という名称でしたが、2016年トルコ・イスタンブルで開催された第40回世界遺産委員会において「ポルト歴史地区、ルイス1世橋およびセラ・ド・ピラール修道院」という名称に変更されました。
ポルトと大航海時代
ポルトは、ローマ時代には「ポルトゥス・カレ(カレの港)」と呼ばれ、貿易が盛んな都市でした。この呼び方が、後の「ポルトガル」という国名の由来となりました。
ポルトガルは、14~15世紀にかけての大航海時代に勢力を伸ばします。ポルトガル王ジョアン1世の息子エンリケ航海王子は、ポルトで造られた大船団を率いて各地へ航海に乗り出しました。彼の、1415年のセウタ(アフリカ北岸)の攻略が、海外へとポルトガルが羽ばたく第一歩となりました。
「ポルト歴史地区、ルイス1世橋およびセラ・ド・ピラール修道院」主要スポット
サン・ベント駅
ポルトの陸の玄関口で、世界で最も美しいと言われる駅のひとつです。構内には2万枚のアズレージョ(青い装飾タイル)でできた壁画があり、ポルトガルの歴史を絵で見ることができます。前述のエンリケ航海王子によるセウタ攻略のシーンもあります。
サント・イルデフォンソ聖堂
サン・ベント駅東側に、サント・イルデフォンソ聖堂はあります。サント・イルデフォンソ聖堂は、1739年に完成した初期バロック様式の聖堂です。元は、別の礼拝堂がありましたが、老朽化により解体、その後新しい聖堂として生まれ変わりました。イルデフォンソとは、スペイン・トレドの大司教 聖イルデフォンソのことで、彼の名に因み命名されました。
サン・ジョアン国立劇場
ポルト歴史地区中心部バターリャ広場にあるサン・ジョアン国立劇場は、1794年にイタリアの建築家ビセンテ(Vicente Mazzoneschi)指揮のもと、オペラハウスとして使用するために計画されたものでした。1796年から建設が始まり、1798年に完成しました。劇場の名前であるサン・ジョアン(聖ヨハネ)とは、ポルトガル王ジョアン6世の戴冠に敬意を表して命名されました。
クレリゴス教会
1732年から1750年にかけて建設された、バロック様式の教会です。大理石のファサードには花輪模様や貝のモチーフが彫られており、非常に優美です。高さ76mの鐘塔は「クレリゴスの塔」と呼ばれ、市のシンボルとなっています。
ポルト大聖堂
12世紀頃建てられ、以後改修と増築を重ねてきた、市内で最も古い建造物です。ファサードの外観や双塔はロマネスク様式ですが、ゴシック様式のバラ窓や回廊、礼拝堂、張り出し玄関が見られます。内部はたくさんのアズレージョで飾られています。ジョアン1世はここで結婚式を挙げました。
ボルサ宮
ボルサ宮は、19世紀に建てられました。名前に「宮」がつくことから、宮殿を思われるかもしれませんが、ポルトの商業組合本部であり証券取引所として使用されていました。スペインのアルハンブラ宮殿を模した「アラブの間」は、壁から天井にかけてアラベスクのタイルが敷き詰められています。「法廷の間」では裁判が行われていました。
サン・フランシスコ教会
14世紀にゴシック様式で建てられた教会で、17世紀にはバロック様式に増改築が行われました。バロックの彫刻が内部には飾られ、礼拝堂は「ターリャ・ドウラーダ」という金泥細工で装飾されています。これには600㎏の金箔が使われたといわれています。日本人として、ぜひ見ておきたいものが祭壇画です。祭壇画には、長崎やモロッコにおける殉教の場面などが描かれており、布教に訪れた異国の地で起こった出来事です。また、サン・フランシスコ教会には、バロック装飾の極致といわれるキリストの家系図「ジェッセの樹」があり、こちらも見どころのひとつです。
ドン・ルイス1世橋
ドン・ルイス1世橋はポルトの中心部と旧市街を結ぶ橋で、ドウロ川にかかっています。1886年に完成し、高さは約45mで2階建ての構造です。エッフェル塔を設計したギュスターヴ・エッフェルの弟子テオフィロ・セイリグが設計しました。
セラ・ド・ピラール修道院
セラ・ド・ピラール修道院は、ポルト歴史地区の対岸、ドン・ルイス1世橋を渡った場所にあり、小高い丘に建っています。16世紀に創建された修道院は、円形の形をした独特な造りとなっています。セラ・ド・ピラール修道院は、現役の修道院であるため、施設の1部のみが公開されています。そのため、観光客があまり訪れることがありません。しかし、セラ・ド・ピラール修道院最大の魅力が、ポルト歴史地区ならびにドン・ルイス1世橋を見渡せる絶景ポイントということです。
ポルトは「ポートワイン」の産地としても知られています。ワイナリーもありますので、本場のポートワインをぜひ味わってみてください。美しいアズレージョは、ポルトガルの植民地となったマカオにも伝わっていますよ。