| 名称 | リュブリャナのヨジェ・プレチニック作品群:人を中心とした都市計画 |
|---|---|
| 国 |
スロベニア |
| 登録区分 | 世界文化遺産 |
| 登録年 |
2021年に開催された第44回世界遺産委員会拡大会合において、スロベニアの「リュブリャナのヨジェ・プレチニック作品群:人を中心とした都市計画」が世界文化遺産として登録されました。
スロベニアの首都リュブリャナは、第一次世界大戦を経てオーストリア=ハンガリー帝国が崩壊した後、新しい国の中心都市へと生まれ変わる必要がありました。この重要な時期に街の再開発を手がけたのが、建築家ヨジェ・プレチニック(1872〜1957年)です。
リュブリャナのヨジェ・プレチニック作品群
彼の設計は、当時流行していた単一的で近代的な建築様式とは一線を画していました。古い街並みや自然の地形を壊すのではなく、それらと対話するように新しい建造物を配置したのが大きな特徴です。川や緑の空間(公園や歩道)を活かしながら、街の中に市民が自由に集える場所や公共施設を優しく組み込んでいきました。
都市全体を貫く主な軸(プロムナード)と、そこに組み込まれた代表的な構成要素には以下のような場所があります。
陸の軸(緑のプロムナード)
トルノヴォ橋を出発点とし、フランス革命広場、ベゴヴァ通り(国立大学図書館を含む)を経て、コングレス広場(ズヴェズダ公園)へと至るルート。
水の軸(リュブリャニツァ川沿い)
川沿いの散策路や橋(三本橋や靴職人の橋)、河岸の景観から川の水門まで続くルート。
その他の重要施設・スポット
市民の生活を支えるプレチニクの市場、静寂な雰囲気に包まれた墓地「ジャレ(すべての聖人の庭)」、郊外に建つ聖ミカエル教会や聖フランシスコ教会など。
プレチニックが手がけた施策の中で、観光客にも特に親しまれているのが、リュブリャニツァ川にかかる「三本橋」です。もともとあった一本の石橋の両脇に、歩行者用の橋を二本付け足して「扇形」に広げるという斬新なデザインを施しました。単に交通の便を良くするだけでなく、橋そのものを市民が立ち止まり、川や街並みを眺めて楽しむ「広場」へと変貌させたのです。
このような「過去の遺産を活かしながら都市を人間中心に再設計する」という試みは、世界的にも非常にユニークです。例えば、ブラジルの首都建設のために何もない野原から作られたブラジリアのような計画都市とは異なり、リュブリャナでは何世紀にもわたって積み重ねられた街の歴史をそのまま生かしてリノベーションが行われました。
また、同じ時代にパリなどで活躍したル・コルビュジエが手がけたル・コルビュジエの建築作品に見られるような、機能性や合理性を最優先する近代建築の波に対し、プレチニックは古代ギリシャやローマの古典的なデザイン要素を取り入れながら、温かみのある人間味あふれる空間づくりを目指しました。
プレチニックの手によって生まれ変わったリュブリャナの街並みは、現代でも市民の日常の場として活気にあふれており、「人間を中心に据えた都市空間づくり」の素晴らしい手本として世界中から訪れる人々を魅了し続けています。