世界遺産は、遺産の保護・保全、そして次の世代に受け継ぐことを目的としていますが、登録されている遺産の中には、さまざまな脅威に直面している遺産もあります。
2024年時点で1223件ある世界遺産ですが、様々な要因により遺産の価値が損なわれる危機にあるものもあります。
それらの遺産は「危機に晒されている世界遺産リスト」=危機遺産リストに登録されています。これが、危機遺産と呼ばれている遺産です。
危機遺産の詳しい解説
危機遺産は、2024年時点で56件あります。危機遺産に登録される理由は、風化や気象の変化などの自然環境や時間の経過によって起こった危機や戦争や内戦による破壊行為、環境破壊など理由は様々です。
例えば、文化遺産では、1982年から2024年現在まで最も長く危機遺産に登録されている「エルサレムの旧市街とその城壁群」は、イスラエルとパレスチナの紛争、3つの宗教の聖地であるが故の帰属問題など多くの問題を抱えています。
他にも、シリアの「パルミラ遺跡」や「古都ダマスカス」など、シリアの世界遺産は、シリア内戦やISの破壊によって危機遺産に登録されました。
さまざまな要因からくる危機
自然遺産では、コンゴ民主共和国には5つの世界遺産(ヴィルンガ国立公園、ガランバ国立公園、カフジ=ビエガ国立公園、サロンガ国立公園、オカピ野生生物保護区)がありますが、その内4つが密猟などによる希少動物の減少によって危機遺産に登録されています。
政情不安のある国々や発展途上国に多くある危機遺産ですが、中には、景観破壊や経済発展を優先させ遺産の保護・保全を疎かにした結果危機遺産に登録されるものもあります。
危機遺産リストからは外されましたが、過去にリスト入りしていたドイツの世界遺産「ケルン大聖堂」などは、それらの理由によって危機遺産リストに登録されました。
世界遺産リストからの抹消
危機遺産リストに登録され、改善されず顕著な普遍的価値が損なわれたと判断された場合、世界遺産としての価値を失ったとして、最悪の場合世界遺産リストから抹消されます。
世界遺産の歴史の中で、2007年に、オマーンの「アラビアオリックスの保護区」、2009年にドイツの「ドレスデン・エルベ渓谷」、2021年にイギリスの「海商都市リヴァプール」の3件の遺産がリストから抹消されています。