文化遺産とは、「顕著な普遍的価値(OUV :Outstanding Universal Value)」を有する記念工作物、建造物群、遺跡などです。
世界遺産条約履行のための作業指針で定められている全10項目からなる登録基準(評価基準)のうち、Ⅰ~Ⅵの登録基準の1つ以上を満たすことが条件となります。
ただし、2016年現在登録基準「Ⅵ」単独での登録は認められておらず、1996年に登録された「広島平和記念碑(原爆ドーム)」以降、他の基準とあわせて申請することが望ましいとされています。
さまざまな世界文化遺産
2024年時点で、952件ある文化遺産ですが、文化遺産と聞くと、フランスの「ヴェルサイユ宮殿と庭園」のような豪華絢爛な宮殿やフランスの「モン・サン・ミシェルとその潟」などの宗教・信仰関連遺産、もしくはカンボジア「アンコールの遺跡群」やエジプトの「アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群」のような古代遺跡などが思い浮かぶと思います。
しかし、文化遺産は、宮殿や宗教遺産、遺跡だけでなく幅広いジャンルのものが登録されています。
産業遺産
例えば、イギリスの「アイアンブリッジ渓谷」や日本の「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼・造船、石炭産業」は産業遺産といわれ、人類が営んできた産業活動の足跡を伝える遺構や遺跡などをいいます。ダージリン・ヒマラヤ鉄道で有名なインドの「インドの山岳鉄道群」も産業遺産になります。
文化的景観
他にも、珍しいものといえば、フランスの「サン=テミリオン地域」やポルトガルの「アルト・ドウロ・ワイン生産地域」などはブドウ畑が世界遺産になっています。
これらは、文化的景観と呼ばれる文化遺産の概念で「自然と人間の共同作品」とも呼ばれ、人間が自然環境の中で、社会・経済・文化的に影響を受けながら進化してきたことを示す遺産となっています。
文化的景観という概念は、1992年に採択されたもので、最初に認められた遺産は、ニュージーランドの「トンガリロ国立公園」でした。
トンガリロ国立公園は、1990年に自然遺産として登録されていたので、1993年に文化的景観として文化遺産としての価値も認められ、複合遺産として拡大登録されました。
日本の「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」も文化的景観が認められている遺産で、富士山は「自然遺産」と思われがちですが、文化遺産として世界遺産に登録されています。
登録基準(評価基準)
Ⅰ 人類の創造的資質を示す傑作
Ⅱ 建築や技術、記念碑、都市計画・景観設計の発展において、ある期間または世界の文化圏内での価値観の交流を示すもの
Ⅲ 現存する、あるいは消滅した文化的伝統、文明の存在に関する独特な証拠を伝えるもの
Ⅳ 人類の歴史上の重要な段階を示す建築様式、建築・科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本
Ⅴ ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落や土地・海上利用の顕著な見本。もしくは、危機に晒されている、人類と環境の交流を示すもの
Ⅵ 顕著な普遍的価値をもつ出来事、生きた伝統、思想、信仰、芸術的・文化的作品と直接または実質的関連があるもの