イシュケル国立公園
チュニジア北端に位置するイシュケル国立公園には、北アフリカでは珍しい大湿地帯が広がっています。北アフリカにあった数多くの湿地帯は、干拓や開発でそのほとんどが失われたからです。しかし、この地は1705年から約250年間、チュニジアのフサイン朝王家の狩猟地であっ たため、開発を免れ、太古から貴重な自然環境を造り出しているのは、公園中央にある面積約85km²のイシュケル湖です。
イシュケル湖
北東隣にあるビゼルト湖が地中海とつながっているため、イシュケル湖も完全な淡水湖ではなく、海水が流れ込み、海水魚も生息しています。湖岸には多種の植物が繁茂しています。
冬には、温暖で緑豊かな湿原の動植物を餌とする25万羽の渡り鳥がヨーロッパから飛来し、メジロガモ、ハイイロガン、ナベコウに混じって、非常に珍しいカオジロオタテガモも見ることができます。
1980年、この湿原の貴重な生態系が世界遺産とされ、湿原を保護するためのラムサール条約にも登録されましたが、 密猟者は後を絶たず、また、周辺の干拓地や採士場から汚水が流入し、環境は悪化。さらに湖に流入するすべての河川の河口に水門を設けたため、湿原が乾燥し はじめました。この状況から1996年~2006年までは危機世界遺産リストに登録され、 密猟取り締まりの徹底と、環境汚染からの保護対策が急務とされている。
ダムが湖と沼への真水の流入を急激に減少させたことにより、ヨシ、スゲ、その他の真水植物類が生息していたにも関わらずそれらは好塩性の植物に置き換わり渡り鳥の減少につながりました。
チュニジアの政府は、真水を保持し塩分を減らすための対策をとっていますが、国際自然保護連合による報告書によると塩分が既に極端に高くなっており回復の可能性が急速に失われているとなっています。