| 名称 | ヒルカニアの森林群 |
|---|---|
| 国 |
アゼルバイジャン イラン |
| 登録区分 | 世界自然遺産 |
| 登録年 |
ヒルカニアの森林群
「ヒルカニアの森林群」は、アゼルバイジャンからイランにかけてカスピ海の南岸・南西岸に約1,000キロメートルにわたってアーチ状に広がる、非常に古く豊かな温帯落葉樹林です。世界遺産にはイランとアゼルバイジャンにまたがる17の区域が登録されています。
その歴史はなんと約2,500万年〜5,000万年前まで遡り、かつて北半球の広い地域を覆っていた古代の森の姿を今に伝える貴重な生態系として認められています。氷河期にも寒さから逃れた生き物たちの避難所となったため、固有種や古代の生き残りが多く生息しています。
2019年にイランの自然遺産として登録され、2023年にはアゼルバイジャンの森林区域が追加されました。
「ヒルカニアの森林群」は「生きた化石」の森とも呼ばれます。ヨーロッパやアジアの多くの地域では氷河期の到来によって古代の森林が失われてしまいましたが、カスピ海と高い山脈に挟まれた温暖な気候のおかげで、この一帯だけは氷漬けにならずに生き残りました。ヨーロッパなどで一般的なブナやナラ(オーク)などの先祖にあたる木々が、何千万年もの間そのままの姿で命を紡いできた場所なのです。また、地元の伝統的な暮らしを守るタリシュの人々の持続可能な生活様式も、長年にわたり森林保護に一役買ってきたと言われています。
このような「氷河期を生き延びた避難所」としての役割を持つ世界遺産は、世界各地にも存在します。例えば、ヨーロッパ側で近隣に位置する西カフカースも同様に、豊かな生態系と古代の森林の面影を残す地域として知られています。また、東アジアに目を向けると、日本の屋久島もまた、古くからの固有種や樹齢数百〜数千年を超える巨木が密生する島として有名です。
さらに歴史的な繋がりで見ると、この緑豊かな森林地帯のすぐ近くには、かつてシルクロードの要所として栄えたイランの世界遺産「ペルシャ式庭園」の代表格や、古代王朝の遺跡群が点在しています。乾燥した荒野や沙漠のイメージが強い中東地域にあって、ヒ「ヒルカニアの森林群」は「奇跡の緑の帯」として古くから人々に恵みをもたらし、歴史的・文化的な営みとも密接に関わりながら今に受け継がれています。