福建土楼

福建土楼は、中国の福建省南西部の山岳地域に点在する土楼群です。ほとんどは12世紀から20世紀にかけて建てられています。土楼は大きな集合住宅で、円形や楕円形、方形など形は様々です。外観は一見すると要塞のようです。

福建土楼は2008年、世界遺産に登録されました。

福建土楼とは

【世界遺産】福建土楼

photo credit: DSCF0086-1a via photopin (license)

土楼とは、通常は外部立入が禁止されている大きな集合住宅で、そこには客家(ハッカ)という北方からの移民の人々が一族で住んでいました。

異民族に追われ、一族で南下してきた客家の人々は、結束して自分たちの身を守る必要がありました。そのため、180㎝以上の厚い土壁を設け、3階建てや5階建てなどの大きな住宅を造り、そこに80家族以上が集まったのです。

外敵の侵入を防ぐため、入口は1つしか設けていません。

土楼の構造

中国の伝統的な住居に特有の考え方として、「外に閉じ内に開く」というものがあります。土楼は中央に中庭があり、そこには共同の井戸や祖先を祀った廟があります。中庭を中心として、その周りに住居が建てられているという様相です。

対等な共同生活をするために、間取りはすべて同じです。一般的に台所や井戸は共同で、中央の祖廟に向かって一族で住むことが、一族の統一と保護の象徴でもありました。

壁が厚く造られているので、矢や銃撃も防ぐことができました。外壁上層部には穴があり、そこから銃撃することも可能でした。

福建土楼の見どころ

【世界遺産】福建土楼

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福建土楼には、特徴ある土楼がいくつも見られます。

振成楼

永定県の洪杭土楼群に属している土楼です。1912年にタバコ商の子孫によって建てられました。

2つの円が重なっている円楼で、祖廟にギリシア様式の円柱が用いられており、その美しさから「土楼王子」とも呼ばれています。

外側の円楼は4階建てで184部屋あり、内側のものは2階建てで32部屋あります。

承啓楼

【世界遺産】福建土楼

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永定県の高北土楼群に属しています。1709年に造られました。4つの円楼が重なっており、その規模の大きさから「土楼の王」と呼ばれています。

一番外側の円楼の直径は約63m、4階建てで288部屋あります。その次の円楼は2階建てで80部屋、3番目のものは1階建てで共同図書館となっており、最も中心が祖廟を囲む屋根付きの通路となっています。

ここには江氏の人々が住んでおり、外部の人間でも宿泊ができる場所があります。

裕昌楼

南靖県にある土楼で、支柱構造の測量ミスによって左右がアンバランスな造りになっています。そのため「東倒西歪楼」と呼ばれますが、700年以上建物は保たれています。

田螺坑土楼群

【世界遺産】福建土楼

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南靖県にある、黄氏の人々が住む土楼です。5つの土楼から構成されており、方形の歩雲楼を中心として、周りに3つの円楼と1つの楕円形の楼があります。

土楼の中で生活が完結するようになっていて、中で家畜を飼っているところもあります。一部の土楼は見学することもできますし、中には空いている部屋に泊まることもできるそうですよ。

ギャラリー

この世界遺産のデータ・地図(場所)

名称福建土楼
中国
登録区分 世界文化遺産
登録年

2008年

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  1. 高波颯汰 より:

    すごくきれい

  1. 2023/07/09

    […] (*1)日本で人口に膾炙している「中華街」という呼称だが、実は必ずしも一般的ではない。例えば、戦前は「南京町」「支那町」と呼ぶのが一般的であった(現在でも、神戸のチャイナタウンは「南京町」という名称を維持している)。世界的にみると、「唐人街」という呼称が一般的だが、日本では必ずしも知られていない (参考文献① p.14-17) 。以上を踏まえ、中立性の観点からも、タイトルと冒頭では読者を引き付けるために「中華街」という呼称を使ったものの、ここからは「チャイナタウン」で海外の中国人コミュニティが形成された町を呼びたい。(*2)中国に詳しい方であれば聞いたことがある話であろうが、中国人がレストランで炒飯を注文することはほとんどないという。なぜなら、炒飯は本来余ったご飯でついでに作る食事であるため、わざわざレストランで食べる価値がないとみなされるからである。そのため、日本人が中国現地のレストランで炒飯を注文すると、奇妙な目でみられることが多いという。筆者も幼少期に中国に住んだ経験があるが、確かにレストランで炒飯が注文されたシーンは一度も見た記憶がない。 (*3)中国は、その地理的な広大さもあってか、数多くの方言がその中に存在し、それらの多くは互いに会話が通じないほどかけ離れている。近代以降、中国政府は北京方言をベースに作成された標準中国語を教育などで普及させようとし、その成果もあってか、現在ではほとんどの中国人が標準中国語を使いこなせる。一方で、海外の中国系移民は広東出身もしくはその子孫が多いため、未だに広東語が優位なチャイナタウンも多い。日本では標準中国語を「北京語」と表記することが多いが、厳密には不正確であるため、本記事では「中国語」と表記する。ちなみに、標準中国語は、中国語では「普通話」、英語では“Mandarin Chinese”と表記されることが多い(広東語は、「広東話」と“Cantonese Chinese”)。(*3追記)ちなみに最近ヒットした映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(Everything Everywhere All at Once)』でも、主人公の家族は中国語と広東語交じりの会話を行っていた。主人公は香港出身という設定であるため(香港は地域としては広東の一部)、このような複雑な言語背景を持つに至ったと考えられる。 (*4)太平天国の乱とは、1851-1864年に起きた清朝に対する大規模な反乱である。この反乱による死者は推定2000万ともいわれる。ちなみに第一次世界大戦の死者は推定1000万といわれるので、一国の内戦が世界大戦を上回る死者を出していたことになる。(5*)余談だが、wikipedia由来の情報なので必ずしも正確である保証はないものの、四邑にルーツをもつ著名人として香港を代表するイケメン俳優であるアンディ・ラウ(劉徳華)とトニー・レオン(梁朝偉)がいるとのことである。2人が主演を務めた映画『インファナル・アフェア』は香港映画史に名を刻む大傑作である(のちにハリウッドでマーティン・スコセッシ監督レオナルド・ディカプリとマット・デイモン主演で『ディパーテッド』としてリメイクされ、アカデミー賞をとっている)。Amazon PrimeとU Nextで観れるので、ぜひ色んな方に観て頂きたい。(*6)客家とは何かを説明するのは難しいものの、一言で言えば「後期移民」である。中国は、漢民族の北部から南部への移民によって拡大した国といえるが、遅れて移民したがゆえに現地に馴染めず、閉鎖的に自立した生活を営み続けたグループを総称して「客家」と呼ぶ。最近では、福建に暮らす客家の伝統的な集合住宅“土楼”が世界遺産に登録されて話題となった。ちなみに、孫文、鄧小平、李登輝、リー・クワンユーといった中華圏における歴史的な人物が客家出身としばしば言われるが、これらは根拠のない俗説であることが多い。(参考文献④) (*7)具体的には1905年制定の外国人条例(the Aliens Act)の1914年以降の厳格な運用や、1919年の外国人制限条例(the Aliens Restriction Act)がある。( 参考文献②や参考文献③) (*8)少し補足をすると、移住後に現地のイギリス人女性と結婚した中国人男性も数多くいたという。そのため、強制送還される際は、妻や子どもを残して、帰国せざるを得なかった方がほとんどである。(参考文献③) (*9)ただし、実際には18世紀頃に相互扶助のために下層の群衆が結成した秘密結社で、明確な政治的目標があったわけではないというのが現在の定説である。「反清復明」というスローガンもあくまで団体に秘密めいたイメージを付けるために掲げられたといわれる。このスローガンが実質的な意味を帯びるようになるのは、清末の反体制運動においてである。(参考文献⑧) […]

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