乳香の土地
乳香の土地は、中東オマーンにあるユネスコの世界遺産です。古来、奢侈品の一つであった乳香の交易で栄えたアラビア半島南部に残る遺跡のうち、オマーンのドファール特別行政区内にあるオアシス都市遺跡、港湾遺跡、交易路跡や乳香の群生地が登録対象となっています。
シスルは交易路上に存在していたオアシス都市の遺跡で、紀元前2世紀頃には栄えていた様であるが、西暦3世紀には交易上の要衝ではなくなっていました。要塞の壁の遺構が今も残っています。
ホール・ルーリの考古遺跡と自然環境は、紀元前1世期末に建造された港で、当時の乳香の交易に使われていました。
アル=バリードは鉄器時代(紀元前1300年 – 前300年)に遡る港町の遺跡で、西暦12世紀頃までは栄えていたため、中世のモスクの遺構なども発掘されています。
乳香とは?
乳香とは、ムクロジ目カンラン科ボスウェリア属の樹木から分泌される樹脂のことです。この樹皮に傷をつけると樹脂が分泌され、空気に触れて固化します。1-2週間かけて乳白色~橙色の涙滴状の塊となったものを採集します。古くからこの樹脂の塊を焚いて香とし、または香水などに使用する香料の原料として利用されています。
また、東方の三博士がイエス・キリストに捧げた3つの贈り物の中に乳香があることでも知られています。日本にも10世紀には薫香の処方内への記述が現れるため、このころにシルクロードを通じて伝来したものと考えられています。