| 名称 | フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群 |
|---|---|
| 国 |
アメリカ |
| 登録区分 | 世界文化遺産 |
| 登録年 |
2019年アゼルバイジャンの首都バクーで開催された第43回世界遺産委員会において、アメリカの「 フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群」が世界文化遺産として登録されました。
フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群
ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエと共に「近代建築の三大巨匠」と呼ばれるアメリカの建築家フランク・ロイド・ライト(1867~1959年)は数々の作品を世に残しました。その中から8作品が世界遺産に登録されました。
ライトが提唱した「有機的建築」という考え方が色濃く反映されており、部屋と部屋の間仕切りを減らしたオープンな間取りや、建物の内と外の境界をあいまいにした開放的な空間づくり、鉄筋コンクリートや鋼鉄といった当時の新しい素材の積極的な活用が大きな特徴です。住居、礼拝堂、オフィス、美術館など多岐にわたる用途の建物が含まれており、都市部から郊外、砂漠までさまざまな環境に適応させた革新的なデザインは、アメリカ国内にとどまらずヨーロッパをはじめとする世界中の現代建築に大きな影響を与えました。
8つの建築作品
世界遺産に含まれる8つの建築は、アメリカの6州に分散しています。ライトの約50年にわたる活動を一つの建築群として見ることができ、それぞれ異なる用途や環境に対して「有機的建築」をどのように実現したのかが分かります。
- ユニティ・テンプル(イリノイ州オークパーク)
1905~1908年に建設された教会です。鉄筋コンクリートを大胆に使用した初期の代表作で、宗教建築でありながら従来の教会とは異なる内部空間をつくり出しました。 - フレデリック・C・ロビー邸(イリノイ州シカゴ)
1908~1910年に建設された住宅です。水平に伸びる低い屋根や大きな窓など、ライトの「プレーリー・スタイル」を代表する建築として知られています。 - タリアセン(ウィスコンシン州スプリング・グリーン)
1911年からライト自身が設計・改築を続けた自邸兼スタジオです。丘陵地の景観に建物を溶け込ませるようにつくられています。 - ホリーホック・ハウス(カリフォルニア州ロサンゼルス)
1918~1921年に建設された住宅です。マヤ文明など、さまざまな文化から得た造形的なインスピレーションをライト独自の建築に取り入れています。 - 落水荘(カウフマン邸)(ペンシルベニア州ミル・ラン)
1936~1939年に建設された住宅です。滝の上に建物を置くという大胆な設計で、自然と建築の一体化を最も分かりやすく示すライトの代表作です。 - ハーバート・アンド・キャサリン・ジェイコブス邸(ウィスコンシン州マディソン)
1936~1937年に建設された住宅です。一般の家庭が暮らしやすく、比較的手頃な費用で建設できる住宅を目指したライトの「ユーソニアン・ハウス」の初期の代表例です。 - タリアセン・ウェスト(アリゾナ州スコッツデール)
1938年から建設が始まった、ライトの冬の自邸兼スタジオです。砂漠の環境に合わせ、周囲の自然との調和を図った独特の建築となっています。 - ソロモン・R・グッゲンハイム美術館(ニューヨーク)
1956~1959年に建設された美術館で、ライト晩年の代表作です。内部には螺旋状のスロープが続き、一般的な箱型の美術館とは大きく異なる空間構成になっています。
落水荘

ライトの建築は、作品そのものの美しさだけでなく、多くの映画やドラマのロケ地・モチーフとしても愛されてきました。特に「落水荘」は、アメリカ建築家協会(AIA)が「アメリカ建築の史上最高傑作」と評したことでも知られ、数々の映画のインテリアデザインや背景美術に影響を与えています。
グッゲンハイム美術館

また、ニューヨークの「グッゲンハイム美術館」はその印象的な外観から、『メン・イン・ブラック』をはじめとする多くの映画作品に登場し、街のランドマークとして親しまれています。
日本との関係
さらに、フランク・ロイド・ライトは日本とも非常に深いゆかりがあります。旧帝国ホテル本館の設計を手がけたことで知られており、大正時代に建てられたその中央玄関部分は、現在も愛知県の「明治村」に移築・保存されています。彼が抱いていた浮世絵への深い造詣や日本の伝統的な建築様式への関心は、室内と屋外をゆるやかにつなぐ空間デザインなど、自身の「有機的建築」の形成にも大きなヒントを与えたと言われています。
世界中に目を向けると、20世紀のモダン建築を代表する世界遺産として、フランスの建築家ル・コルビュジエの作品群や、ドイツで誕生しモダンデザインの基礎を築いたヴァイマル、デッサウ及びベルナウのバウハウスとその関連遺産群などが挙げられます。ル・コルビュジエが機能性と合理性を追求した幾何学的なアプローチを特徴としたのに対し、ライトは木や石といった素材の質感や周囲の自然景観との調和を重視しました。同じ時代に海を隔てたアメリカとヨーロッパで、それぞれ異なるアプローチから現代の建築のあり方を模索し、世界中の暮らしや街並みを変革していったストーリーは、近代デザインの歴史を紐解くうえで非常に興味深い繋がりを見せてくれます。