アルフェルトのファグス工場
アルフェルトのファグス工場は、ドイツ中部のニーダーザクセン州の都市アルフェルトにある製靴用の靴型工場からなる世界遺産です。アルフェルトは、靴型の製造に適したブナが育まれる豊かな森に囲まれた小さな都市。
ファグス工場が建設された1900年代の工場はレンガや石造りが主流で、窓が小さく薄暗い工場内の労働環境は悪く、工員の怪我が絶えませんでした。ファグス工場オーナーのカール・ベンシャイトはこれらの劣悪な労働環境と断絶することを目指し、鉄骨と巨大なガラスパネルで建てられた世界初のガラス張りの工場を建設し、光にあふれた働きやすいファグス工場は「労働者の宮殿」と称賛されました。
1911年から建設が開始されたファグス工場は、建築家ヴァルター・グロピウスによって設計された初期モダニズム建築の傑作。グロピウスの前衛的な設計はヒトラーからは嫌悪されたものの、グロピウスの機能的で働きやすい環境を追求した最先端の工業デザインは世界中に大きな影響を与え、鉄骨とガラスの建築は世界中に広まっていきました。
ファグス工場ではかつて木製靴型のみを生産していましたが、より需要のあるプラスチック製靴型の生産にシフトして、現在でもファグス=グレコン・グレテン社の名称で靴型工場として稼動しており、産業革命から大量生産の時代へ移りかわる工業技術の変遷を目の当たりにすることができます。