エネディ山塊:自然的・文化的景観は、2016年トルコ・イスタンブルで開催された第40回世界遺産委員会において、チャドの世界複合遺産として新規登録されました。
エネディ山塊:自然的・文化的景観
チャド北東部にあるエネディ山塊には、多彩な岩絵群と自然美、特色ある生態系が残されています。自然環境的にも大変興味深いものがあり、サハラ砂漠に位置するため乾燥地帯にありながら、夏には雨が降ります。
そのため長い間、風雨によって山が浸食され、独特の奇岩群やワディ(峡谷)、ゲルタ(水溜り)を作り出し、それらが織りなす絶景が形成されました。
エネディ山塊は、人々や動植物にとって砂漠のシェルターのような役割を果たしてきました。岩壁のいたる所に、馬、ラクダ、牛などが生き生きと描かれており、それらの岩絵によって描いた時期や古代の人々の様子を知ることができます。
サハラ砂漠最後のワニ「デザート・クロコダイル」
エネディ山塊のゲルタには、「サハラ砂漠最後のワニ」とされるデザート・クロコダイルが生息しています。デザート・クロコダイルは、かつてナイル砂漠が、緑が生い茂る地であった時代に西アフリカ全域に生息域を拡げていったといわれていますが、現在、生息数も少なく、大変貴重なワニです。
エネディ山塊の遊牧民であるトゥブ族の人々は、ワニを神聖なものとしています。古くから、ゲルタからワニがいなくなると水が枯れると信じられており、デザート・クロコダイルを大切に守っています。