| 名称 | 技師エラディオ・ディエステの作品:アトランティダ教会 |
|---|---|
| 国 |
ウルグアイ |
| 登録区分 | 世界文化遺産 |
| 登録年 |
2021年に開催延期された第44回世界遺産委員会拡大会合において、ウルグアイの「技師エラディオ・ディエステの作品:アトランティダ教会」が世界文化遺産として登録されました。
「技師エラディオ・ディエステの作品:アトランティダ教会」
「技師エラディオ・ディエステの作品:アトランティダ教会」は、ウルグアイの首都モンテビデオから東へ約45km離れた沿岸の街、エスタシオン・アトランティダに位置する近代建築です。
ウルグアイ出身の建築家・エンジニアであるエラディオ・ディエステ(1917–2000)によって設計され、1960年に完成しました。
イタリアの初期キリスト教建築や中世の宗教建築から着想を得ており、安価な地元産のレンガを補強して巧みに組み上げる独自技術「補強レンガ」を用いて建てられています。高価な鉄骨やコンクリートを大量に使わずに、力学的な美しさとコスト削減を同時に実現した20世紀ラテンアメリカ近代建築の傑作です。
教会を構成する3つの建築と建築の過程
教会建築を構成する主な要素は以下の3つです。
- 本堂:
波打つような独特な曲線の壁と天井(ガウスヴォールト構造)で構成された長方形の建物です。無駄な柱がなく、広がりのある広大な空間をつくり出しています。 - 鐘楼(ベルタワー):
本堂の右側に立つ円筒状の塔です。レンガを透かし積みにして組み上げられており、軽やかな印象を与えます。 - 地下の洗礼堂:
敷地の左側に位置する地下施設です。地上には三角形の入口が飛び出しており、中央の丸窓(オクルス)から自然光が差し込む神秘的な空間になっています。
アトランティダ教会が建てられた1950年代のウルグアイは、経済的な制約が多い時期でした。ディエステは「低予算でも地元の人々の手で最高品質の美しい建物を造る」という人間主義的な哲学のもと、地元の職人たちと共にこの作品をつくり上げました。
波打つ美しい屋根や壁は、デザインのためだけではなく、曲面構造によってレンガ自体の強度を高めるという物理的な計算に基づいています。薄いレンガ造りでありながら地震や風圧に耐える強固な構造を実現したこの手法は、構造工学の世界でも世界的によく知られています。また、ディエステが考案した移動式の型枠(建物を建てる際の木枠)技術は、建築の作業効率を飛躍的に高め、後の南米各地の建築現場にも大きな影響を与えました。
ブラジリアと対照的な南米の近代建築
同じ南米地域で近代建築の金字塔として知られるブラジルの世界遺産「ブラジリア」が、鉄筋コンクリートと国家的な莫大予算を投入して造られた未来都市であるのに対し、アトランティダの教会は「ごく身近なレンガと限られた資金」で生み出された対極的な魅力を持っています。素朴な素材を用いながらも幾何学と力学の美を極めた佇まいは、地元の労働者の誇りであり、南米におけるもう一つの豊かな近代建築の姿を今に伝えています。