国立西洋美術館本館
(ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-)
上野公園の中にある国立西洋美術館本館は、2016年トルコ・イスタンブルで開催された第40回世界遺産委員会において新規登録された「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」の17件ある構成資産の一つです。
国立西洋美術館本館は、建築家のル・コルビュジエが設計した日本で唯一の建造物で、日本の20件目の世界遺産です。
国立西洋美術館 本館
1958年(昭和33年)に建設着工、翌年竣工した国立西洋美術館は、日本とフランスの国交回復と友好の証として造られました。
開館の経緯は、着工から遡ること38年前、1920年川崎造船所社長・松方幸次郎が、日本に西洋美術を紹介しようと、ヨーロッパで絵画や彫刻などの美術作品(松方コレクション)を収集します。
しかし、第二次世界大戦が勃発し、戦後それらの美術作品は、敵国の財産としてフランス政府の管理下に置かれることになりました。
松方コレクションの返還
▲モネ 『睡蓮』
1953年松方コレクションに転機が訪れます。日本とフランスが文化協定を締結することになり、松方コレクションが日本に返還されることになりました。
しかし、フランス政府は返還するにあたり、ある条件を提示しました。それは、フランスから返還される美術作品(松方コレクション)を展示するための美術館を創設することでした。
この条件を満たすため、建設されたのが国立西洋美術館でした。そして、新しい美術館の設計者に指名されたのが、フランスで活躍していた世界的建築家ル・コルビュジエでした。
ル・コルビュジエ
ル・コルビュジエは、スイスのラ・ショー=ド=フォン(2009年「ラ・ショー=ド=フォンとル・ロックル、時計製造業の都市計画」として世界遺産に登録)で生まれ、フランスで活躍した建築家で、現代の建築の基礎を築いたとされる人物です。
ル・コルビュジエは、基本設計を行ったのみで、「無限に成長する美術館」というコルビュジエのコンセプトのもと実施設計を行ったのは、彼の弟子である前川國男、坂倉準三、吉阪隆正の3人でした。
3人は、いずれも日本を代表する建築家で、私たちが一度は目にしたこのある有名建築物を数多く手掛けています。
国立西洋美術館 本館と新館
国立西洋美術館設立20周年の記念すべき年(1979年)、国立西洋美術館に新館が建設されます。そのため、ル・コルビュジエ設計の建物は、本館と呼ばれるようになりました。
国立西洋美術館は、1階がピロティ(柱だけで構成される壁のない空間)となっており、1階の円柱が2階を支えている構造です。
国立西洋美術館 本館1階(19世紀ホール)
国立西洋美術館本館は常設展となっており、一般券は430円です(2016年8月現在)。常設展入口を入ると屋上の明かり取り窓まで吹き抜けとなったホールが目の前に広がります。ル・コルビュジエはここを「19世紀ホール」と名付けました。現在はロダンの彫刻の展示場となっています。
「19世紀ホール」にあるロダンの作品
スロープから2階展示室へ
展示室は、スロープで結ばれた渦巻き状の導線、自然光を活かした照明設計などが特徴的です。19世紀ホールの入り口を向いて左側にあるスロープをのぼって2階に進みます。
2階展示室
2階展示室は中央の吹き抜けのホールを囲む回廊状になっています。数多くの作品を楽しむことができます。
国立西洋美術館 新館
順路をたどっていくと、2階にある本館展示室から新館展示室に移動することになります。ル・コルビュジエの設計した本館と一体に機能するように新館が増築されました。「睡蓮」などのモネの作品は新館にあります。
国立西洋美術館 前庭彫刻
美術館の前庭には数々のロダンの作品が置かれています。チケットを買わなくても見ることができるので、気軽に楽しめますよ。いくつかご紹介します!
考える人
カレーの市民
地獄の門
国立西洋美術館本館は、日本に唯一残るル・コルビュジエ作品です。東京・上野公園内にありアクセスにも便利です。ぜひ、一度は訪れ、その目でコルビュジエの世界を確かめてください!
国立西洋美術館の公式サイト
http://www.nmwa.go.jp/jp/index.html
「国立西洋美術館本館」のデータ
国名 | 日本 |
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世界遺産名 | ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献- |
名称 | 国立西洋美術館本館 |