カティ・サーク号
マリタイム・グリニッジ(海事都市グリニッジ)

1869年にスコットランドのダンバートンで建造された大型快速帆船。当時としては世界最速を誇った船で、中国から英国まで紅茶を輸送する「ティー・クリッパー」として、いかに早く一番茶を届けるか競っていた帆船のうちの一艘です。2007年の火事から5年の歳月をかけて修復され、2012年4月26日より一般公開されています。

高速運搬船カティ・サーク号の歩み

1869年11月17日にスエズ川が開通した5日後の22日に進水式を行ったカティ・サーク号。この頃は、帆船から蒸気船へと移り変わる頃で帆船時代は終盤を迎えていました。ティー・クリッパーとしての活躍期は約8年と短く、その後は数奇な運命を辿ります。

カティ・サーク号の誕生

【世界遺産】カティ・サーク号 | マリタイム・グリニッジ

photo credit: Cutty Sark via photopin (license)

19世紀初頭に軍用小型帆船を基に米国で大型クリッパーが生まれ、アメリカ西海岸のゴールドラッシュと共に普及。米国クリッパー船の登場により、中国からロンドンまで輸送が片道1年から3ヶ月余りに縮まりました。

「米国に劣らない船を」との依頼を受けたスコットランドでは、開発途中で経営難に陥り新しい会社に引き継がれるなど大変な苦労の末、1869年11月22日に「カティ・サーク号」が誕生しました。

数奇な運命を背負う日々

ティー・クリッパー初の航海で110日との好成績を残しました。東南の貿易風をとらえライバルのサーモ・ピリー号を400マイルも引き離しましたが、不運にも嵐に巻き込まれ舵を失い結局は1週間も遅れて到着しています。

スエズ運河の開通と蒸気船への移行という時代の流れにより、1870年ごろ59艘あった英国籍のティー・クリッパーも1878年頃には9艘まで減少。蒸気船は、荷物の量は2倍、スピードも1ヶ月以上早く、なす術もなく屈辱的な最期を迎えました。

その後ニューヨークで石炭やひまし油などなんでも運ぶ船へと変わりました。船主ジョン・ウィリスは、1883年に世界最大の羊毛産出国のオーストラリアから英国への羊毛輸送をはじめました。

初の羊毛輸送ではこれまでの記録を25日も縮める快挙となり華々しい復活を遂げました。1889年には最新鋭の蒸気船ブリタニア号を追い抜き、ティー・クリッパー時代のライバル、サーモ・ピリー号も敵わない速さでした。

売られた老いぼれ船

輸送コストの低かった羊毛輸送に加えメンテナンス費用がかさむようになった老船カティ・サーク号は、1895年にポルトガルの貨物船会社へと売却され27年間を過ごしました。

永遠のライバル、サーモ・ピリー号はポルトガルのリスボン沖で海軍の砲撃訓練に使われ一生を終えています。

英国への帰還

1922年にコーンウォール南部ファルマス港に停泊していたカティ・サーク号。かつて有名な船長だったウィルフレッド・ダウマンが、美しい帆船のカティ・サーク号だと一目で見出しました。大富豪の令嬢と結婚して膨大な富を築いていた彼に老朽船としての価値を上回る3750ポンドという高値で買い取られ、英国に帰還しました。

嵐で失ったマストや塗装が修復され、美しい姿を取り戻し、見習い水夫たちの訓練船としての役割や観光客に公開されて過ごしました。恩人ダウマンの死後、夫人によってテムズ岸グリーンハイズの海軍学校に5000ポンドの維持費と共に寄付されました。テムズ岸までの道のりがカティ・サーク号の最後の航海。第二次世界大戦も無傷で戦火を潜り抜けましたが、戦後老朽化が進み引退しました。

余生を送るカティ・サーク号

1951年の英国博覧会でデットフォードに展示された後、英国海軍ゆかりの地グリニッジで余生を送っています。民間からの寄付により25万ポンドの修復資金を集め、ティー・クリッパー時代の姿を取り戻し、1957年より博物館として一般公開されました。

2006年から老朽化による修復工事の最中に、2007年の火災に見舞われました。幸運なことに修理中で機材がほぼ取り外されていたので、実際の被害は5%ほどだったといわれています。

修復は火事により遅れましたが2012年に無事完成し、エリザベス女王列席のもとお披露目が行われました。59艘もあったティー・クリッパー船ですが、現在は1艘となっています。

カティ・サーク号の今

【世界遺産】カティ・サーク号 | マリタイム・グリニッジ

photo credit: Cutty Sark via photopin (license)

博物館となった船は金属の棒で支えられて地上から3mも持ち上げられています。これにより船底部分を見ることができます。

内部には80を超える船首像や歴史を紹介した展示物、船員28人の食事の内容や当時の貿易など様子が分かりやすく展示してあるので一見の価値ありです。また、海に関するグッズなどが売られるギフトショップなどもあります。

まとめ

【世界遺産】カティ・サーク号 | マリタイム・グリニッジ

photo credit: Cutty Sark via photopin (license)

数奇な運命をたどった船ですが、実はこの船ほど強運な船はないといわれています。残存する唯一のクリッパーとして永久に保存される船に訪れて、帆船の歴史ロマンに触れてみませんか?

ギャラリー

「カティ・サーク号」のデータ

   
国名 イギリス
世界遺産名マリタイム・グリニッジ(海事都市グリニッジ)
名称カティ・サーク号

 

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