| 名称 | コインブラ大学:アルタとソフィア |
|---|---|
| 国 |
ポルトガル |
| 登録区分 | 世界文化遺産 |
| 登録年 |
「コインブラ大学:アルタ地区とソフィア地区」は、ポルトガル中部の古都コインブラにある、ヨーロッパ最古級の大学と、その周辺に形成された歴史的な大学都市です。
コインブラ大学
世界遺産の中心となるコインブラ大学は、1290年に創設され、ポルトガル王国の歴史とともに発展してきました。大学は当初リスボンに置かれましたが、1308年にコインブラへ移転し、その後もリスボンとの間を何度か移動したのち、1537年にコインブラへ定着しました。世界遺産には、丘の上にある大学の中心地区「アルタ地区」と、モンデゴ川沿いに広がる「ソフィア地区」が含まれています。特にアルタ地区では、かつての王宮を利用した大学施設や礼拝堂、図書館などがまとまっており、中世から現代まで続く大学の歴史を、建築と都市景観の両方から見ることができます。
アルタ地区
コインブラ大学を象徴する場所が、丘の頂上にある「パソ・ダス・エスコーラス(大学宮殿)」です。もともとはポルトガル王の宮殿で、1537年に大学がコインブラへ定着した際、王宮が大学の中心施設として使われるようになりました。現在も中庭を囲むように大学の主要施設が配置されています。つまり、ここでは王のためにつくられた宮殿が、そのまま学問の中心へと転用されたわけです。
ソフィア地区
世界遺産は丘の上のアルタ地区だけではありません。モンデゴ川に近いソフィア地区も重要な構成区域です。
ソフィア地区には、16世紀に設立されたサンタ・クルス修道院をはじめ、大学関係者が暮らしたり学んだりする施設が集まりました。16世紀には大学の教育改革が進められ、ソフィア地区には大学のための複数のコレージュ(学寮・教育施設)が建設されました。その後、大学が丘の上へ移るにつれてアルタ地区が中心となりましたが、ソフィア地区には初期の大学都市の姿が残されています。
また、コインブラは伝統文化の宝庫でもあります。学生たちが黒いマント(トラジェ)を羽織って街を行き交う姿は日常的な風景であり、この黒マントの衣装は『ハリー・ポッター』に登場するホグワーツ魔法魔術学校の制服のモデルになったことでも知られています。さらに、街には「コインブラ・ファド」と呼ばれる独自の伝統歌謡が根付いており、主に男子学生によって哀愁を帯びたギターの音色とともに歌い継がれてきました。
コインブラ大学は同じヨーロッパの大学関連世界遺産であるアルカラ・デ・エナレスの大学と歴史地区とも比較できます。スペインのアルカラ大学は、16世紀に人文主義的な教育を推進する大学都市として発展し、ヨーロッパやアメリカの大学制度に影響を与えました。一方、コインブラ大学は中世に始まり、ポルトガル語圏へその文化を広げていったという違いがあります。どちらも、大学が単なる「学校」ではなく、都市そのものを形づくり、さらに国外へ文化や知識を広げる存在だったことを示す世界遺産です。