抹消された世界遺産:アラビアオリックスの保護区
アラビアオリックスの保護区は、1994年にオマーンの世界遺産(自然遺産)として登録されました。アラビアオリックスは想像上の動物であるユニコーンのモデルになったといわれているウシ科オリックス属の草食動物のことです。
この動物の特徴ある角を狙う狩猟が原因で、1972年に野生種が絶滅した過去があります。アラビアオリックスを育成するために、オマーン国王カブース・ビン・サイードが1982年にアメリカから譲り受けた10頭を、オマーン中央部の砂漠の丘陵地帯ジダッド・アル・ハラシース平原に放し飼いで野生に戻し、同地域を保護区として設定しました。
この保護区にはアラビアオリックスのほか、アラビアオオカミ、アラビアガゼル、カラカル、ヌビアアイベックス、フサエリショウノガン、ラーテルなどが生息しています。
世界遺産の登録抹消
2006年オマーン政府は油田などの資源開発の為、アラビアオリックス保護区を1/10に縮小するという衝撃的な方針をユネスコに提出しました。その内容を受け、急遽調査団を組織して現地に派遣。その結果、全65頭いるうちメスが4頭のみという悲惨な実情が判明することになります。このままアラビアオリックスの保護区を縮小すると再度絶滅の可能性があると判断したユネスコは、2007年5月に保護体勢を強化するために、この土地を、危機リストに登録するようにオマーンに提言しました。
さらに、7月にニュージーランドで開催された第31回世界遺産委員会でも、オマーン政府のアラビアオリックス保護区の縮小提案を拒否しました。しかし、オマーンは保護区削除の姿勢を翻すことなく、「アラビアオリックスを保護・管理を続ける能力も意思もない」と表明、世界遺産からの削除を求めたため、世界遺産登録抹消となりました。
世界遺産のなかで登録を抹消されたのは、これが初めてです。